醤油と批評
左屋百色
無題の書をひらき
ドアを叩く
誰もいないから
自分にだけわかる詩をかいたけれど
もはや自分でもわからない
こんな日は
君の詩をよみたい
技巧派がつくりだした行間で道に迷い
言葉の枝を捨てに森へ向かう
すると予感通り
真夜中に森が分裂してゆく
冬の前半でもう既に惨敗
君の詩が理解できないまま
胸に響く不思議を
君に伝えたいのに
時間と空白は加速する
知らない言葉を先物取り引き
現代詩の筆頭株主
短歌と俳句と川柳を経由して
散文の入口に佇む言葉たち
夕陽が歪む街角に消えてゆく
無題の書が燃えている
豆腐の角で君に出会ったら
醤油と批評をお願いします