ひとつ ゆらぎ
木立 悟






雨の奥から曇の淵へ
音は光の手を引いてゆく
白は降り さらに
白は降り


ひとり ひとつの場所にしか
響くことのない色があり
胸の苦しいけだものとなり
冬の川をさかのぼる


冷たくやわらかなものから離れ
坂の上から 暗い街を見た
冬の砂 鉄の語らい
高く高く 遠去かる影


夜のなかの夜のかたまり
白の器を流れるまばたき
光をひとつ拾う指先
粒のように逃げ去る微笑み


ゆらぎの迷路をゆくゆらぎ
玩具のような ひと吹きの秋
どこまでもとどまり ふいに破け
すべての予兆に打ち寄せる日々


森の奥の
緑の水が燃えあがり
炎を宙に溶かしながら
ひとつの音を拭き取ってゆく


羽はつもり
痛みは飛び去る
波をなぞる光の群れ
土に近い 息の苦しさ


光の渦が水を流れる
蒼が青を追い越してゆく
かつて在った手と別の手が
けだものの胸に添えられてゆく






















自由詩 ひとつ ゆらぎ Copyright 木立 悟 2013-12-02 01:12:09
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