死のモアイ像
殿岡秀秋

ぼくが朝に来るたびに
遠景にある像がわずかに
動く気配
それをモアイ像となづけて
毎朝
位置を確認する
いつかぼくと一体になるために
近づいてくるのだ

事故のときには
重い像が空を飛ぶのだろうか
病いのときは
二本足をはやしてドコドコ
走ってくるのだろうか

目前にきて窪んだ目を
大きく見開くのは
いつどこでなのか
検討もつかない

公園を散歩すると
木々の間から
眼を瞑っている像の
横顔が見える

朝食を食べながら
今日の予定を確認する
窓からは
遠くで空と語りあっている
像の顔が見える
まだぼくに用事はなさそうだ

ぼくも話してみようと
像に向かって行ったが
虹のように
どこまで歩いても
距離は縮まらなかった


自由詩 死のモアイ像 Copyright 殿岡秀秋 2013-12-01 03:55:21
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