年を取るとはこういうことか3
イナエ

     医師はどこにも病気が
     見あたらないというのだがー

汚れた世界をばかりを見続けていた 
とも思えないが 硝子体に埃が溜まって
見つめる視野の中心が霞み 
左目で見る妻には唇がなく
だが 
右目で捉える画像の女は臀部がまぶしい

脳は 目を通して結んだ像は旅の幻想だと判じ
光学レンズを通った光を信じて
DVDに固定した風景が確かな美だと言い張る

海馬は現実から疎外され 
記憶を喰うことが出来ずやせ細って
湿原に広がる花の名前をどこに置き忘れたか
似つかぬ名前が湿原を飛び交い
遙かにつづく木道に立ち止まった記憶は
進むことも退くことも出来ず遭難している

レストランにずらり並んだご当地の魚介 肉 野菜 
舌のほしがる美味には
寿命を縮める毒がメタボリックに臭って
それでも 旅の思い出に一通り味を確かめれば 
胃に重く滞り 

温泉の効能を信じたわけでもないが
胃腸病 疲労回復の湯に浸ければ
残りわずかな体力が 温湯に浸みだし
夕闇の外気に冷えて 流れ去る


自由詩 年を取るとはこういうことか3 Copyright イナエ 2013-11-26 13:49:16
notebook Home 戻る