うなじに口づけ
花形新次

炊事をする
きみのうなじが
とても綺麗で
思わず口づけをした
きみはくすぐったがって
首を竦めようとしたけれど
構わず舌を這わせた
今はダメ
悩ましげな声を出すきみに
後でなら良いのかと耳元で囁いたとき
きみのうなじから
プーンと臭いが漂って来た

この魚が腐ったような臭いは
一体何の臭いだ?
隣に住む独り暮らしの老人の腐乱死体か?
違った、よく確かめると
完全に
自分のツバの臭いだった

それ以来
きみのうなじは
ツバの臭いがするという
イメージがつき
2度と綺麗だなんで思わなくなった


自由詩 うなじに口づけ Copyright 花形新次 2013-11-19 23:44:00
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