私信 一足先のけこちゃんへ
板谷みきょう

諦めなければ
叶わぬ夢は無いと
人の幸せばかりを
追い願い続けた君は

自然分娩で
助産婦の手を借り
自宅出産で
十才の女の子を頭に
五人の子供をもうけた

つい先だって
今年の三月に
子供を
産んだばかりだというのに

体の怠さや疲れ易さも
子育てと
人の幸せを
願うことに追われ
自分を後回しに日々を過ごした

異変が続き
異常に気が付いて
病院の門を叩いた時は
手遅れの状態だったと言う

いつでも
会いたい時には
会えるものだと
高を括って
過ごしていたボクは
訃報を聞いて
愕然とした

君との関係が
終わってしまうようで
通夜にも
葬儀にも
行かなかった

ご主人が
本人の希望で
家族と身近な人にしか
闘病のことは
知らせなかったと話す

つまりボクは
蚊帳の外に
置かれていたって訳

夢は
諦めなければ
必ず叶うけれども
生きている間に
叶う保証は
何処にも無いのだ


胸に刻んでおこう


君が
命懸けで
教えてくれたんだもの


自由詩 私信 一足先のけこちゃんへ Copyright 板谷みきょう 2013-11-19 23:35:00
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