月唄 「十六夜」
龍九音



今宵は十六夜惑う月
月を抱きし龍もいる
夜陰に隠れし彷徨人
暫し佇み宙を見る

月を抱きし龍は言う
「灯りが欲しいか?
 月も惑ってるおるぞ」
声無き声で彷徨人立ち竦む

龍に隠れし月は言う
「惑いも迷いも諸人が
 進むための試練です」
静かに目を閉じる彷徨人

その時
一陣の風が吹き抜ける

月を抱きし龍が哭く
「我はまたくるぞ
 主の心に隙間ができたらな」

龍は去り 月が顔をだすと
辺りは仄かな優しい光で満たされた

今宵は十六夜惑う月
確かなものはなくとも
進むべき道は必ずある

彷徨人の瞳は開かれ
道標を見極めるべく歩み始めた


自由詩 月唄 「十六夜」 Copyright 龍九音 2013-11-19 18:47:38
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