初雪
月乃助


 少しためらい
端座する
永いあいだひらくことのなかった
古い三面鏡


 鏡のなかに
まよいの雪雲は、ひろがり


 僕は、人らしくあろうとし、
どうしてか 答えを
真実らしきものをしりたがる


 美しい・もの・は、偽ることも
死ぬことも 嘲られることもない
人間(性)の実体 その世界を投影する鏡面に
母の乳房を欲するように 指をふれる


 人形のような少年が、鏡のむこう
命令的な指先に 彼の細い指でこたえた


 さびしい召使の眼なざしで、
たぎりたつ 「時代」に集約されぬ
不在の者となるように、、


 隠すすべがあるばかりに
裸心を 裸体をさらすことが できないのなら


 鏡のなかに 降り始めた
雪に 赤裸々
あらゆる衣を ぬぎさる


 白い雪の影
白い肌は、いたいたしいほどに
若さをたばね しなやかで、


 そのすがたを凝視しながら


 僕は、不純性になろうと
鏡台の小さな引き出しの
母の紅を手にし
おのれの唇に 濃く 紅く
それを 曳く








自由詩 初雪 Copyright 月乃助 2013-11-15 21:10:02
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