散策
月形半分子

もう、手の届かない
懐かしい季節に
向かうようにーー

クレソンをひとくち
レモンもバニラもお好みで
そんなふうに朝を過ごしたら
天気は良好
青りんごをポケットに入れて
森へ出掛けよう

柔らかな緑の萌えるなか
爽やかな風のそよぎにふかれ
涼やかな葉ずれの音を聞きに
小川が陽光を乱反射させて
さんざしまでがひどく眩しい
若い森へと

あぁ、森に苔やハッカの匂いが溜まっている
陽が高くなるほど閉ざされて、強さをますこの匂いのなかで
僕は思い出を撫でる
時を悔やむ一歩手前を夢想するように

木漏れ日がレースのようにふりそそいで
僕を野苺のように照らしている
もし、このまま沈黙していたら
僕は墓標のよう見えるに違いない

思い上がったハッカの影に立つ
淋しい墓標に





自由詩 散策 Copyright 月形半分子 2013-11-14 12:38:19
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