空の成分
そらの珊瑚

炊きたての
新米を盛った茶碗から
ひとすじの煙がたちのぼる

雨と
土と
太陽と
風と
人の労働とで
育まれたものが
上へのぼっていく

本体から
自由になったものたちは
(たとえば過ぎていった時間とか)
なぜ空を
目指すのだろう

午前九時の東の空に
オブラートのような
雲が流れ
やがて
輪郭から溶けていく
あれのいくつかは
昨日の雨の成分で
その他
虹になれなかった微粒子
渡り鳥の羽ばたき
季節の残像のきれぎれ
お針子が落としていった糸くず
仕舞われていく風鈴の歌

冬の息



自由詩 空の成分 Copyright そらの珊瑚 2013-11-13 08:56:16
notebook Home 戻る