7
きるぷ
部屋の隅であなたが死んでいるから
ドアが開けられない
ぼくは部屋から出られない
せめてもの暇つぶしにと
本を探したが、
あったのは『謎の男トマ』だけだったから
窓のそとを眺めてたら、
あー、
なんて沢山の天使的形象が今日も
・
窓を開け腕を伸ばし、
その一匹をつかまえて
ぼくは空へと叩き落した
また世界にほほえみがみちた
十一月だった
・
「木の葉が舞ってきれいだね みてごらん!
こんな時期も すぐ過ぎるんだね」(dulcemente)
動かないあなたは死んでいるから
ぼくは沈黙をただしく解釈して
部屋をあたためる
話しかける
気になってしまう
苛立ち、
妥協点を探り
蹴っ飛ばし
オーティス・レディングの音楽を流し、
しかるのち甘言を弄し、
何度目かの手をさしのべる
それでもあなたは死んでいるから
ぼくはドアを諦めて
窓から外に出ることにした
そうして無数の天使的形象のひとつとなって
大気に四散する
死人を殺す方法を考えるほどには
やさしくはなれないのだ誰も