都に一人、男が落ちる。衣擦れもないほど肉落ち、
ほつれかけたボタンを抑えて襟を正す。連れだった
猫はきれぎれのアスファルトの隙間に埋まったカス
を舐める。
長雨のくせに息を割る乾燥した外は人気無く、花屋
の店先に出されたままの売れ残りはコンクリートブ
ロックにもたれ、誰も知らぬ喧騒を眺めて露をねだる。
裾に砂がついて、脱いだ上着は祖父の形見。生前は
痴呆の折、日が暮れるたびに助けを求めていた。檻の
感謝。その声は礼のない雨に消える。
《劣の足掻きより:
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