無人駅にて
服部 剛
今はもう(夢の時間)になった、十代の頃。
ほんとうの道を、求めていた。
敷かれたレールを、嫌がった。
思えばずいぶん、躓いた。
人並に苦汁を飲み、辛酸も舐めた。
今、旅の途上の無人駅に立ち
風に吹かれている僕の
背後に伸のびゆくレールには
遠い靄に吸いこまれ
愛の砕けたあの夏の場面さえ
朧なひかりを帯びている
長いレールの傍らに
たどたどしくもひとすじに現在地まで
続いてる、長い、黒い、足跡の連なりよ――
あの頃よりは少々大人になった
旅人の僕はもう一度、これからのレールがのびゆく
遥かな駅の方向へ、瞳を向ける。
靄が、晴れてきた。