<ありがとう>
nonya


僕の<ありがとう>に
羽がはえて
僕の<あり蛾とう>が
飛んでいく

特製オムライスを作っている
君の左肩にふんわり
とまると思いきや
君の脇腹をつまんで
帰還する

<最近少し太ったんじゃない?>
<それはお互い様でしょっ!>

僕の<ありがとう>に
足がはえて
僕の<蟻がとう>が
歩いていく

Yシャツのアイロンがけをしている
君の右肩にあくせく
のぼりつめたと思いきや
君の前髪をつかみそこねて
滑落する

<あれ 髪切った?>
<うん 先週ねっ!>

僕の<ありがとう>に
何もはやさなかったら
僕の<ありが糖>は
照れくさくて甘くとろけてしまう

それでも年に一度くらい
何もはやさない<ありがとう>を
靴を丹念に磨いている
君の後姿へ投げてみたりする

<いつも本当にありがとう>
<なあに?気持ち悪〜い>




自由詩 <ありがとう> Copyright nonya 2013-11-02 12:30:18
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