夜の匂いを忘れてしまうまえに
ユッカ

夜の匂いを忘れてしまうまえに
早くしなくちゃ、って思ったんだ
玄関から一歩踏み出したときに

夜の匂いがするということは
昼間とてもあったかかったということかな
熱が土にたまって、それが噴き出したという気がする
もしそうなら、とても素敵

それが雨の予感だということに
そのときはまだ、気づかないまま
あたしはその空気を胸いっぱいに吸いこむ

残す、ということについて考える
何も残りはしないと知りながら
詩を書くということ

みんな考えるふりをしながら生きてるから
自己啓発の本を何冊読んでみても
携帯電話を握りしめたり、
車のハンドルを握ってみたりするのに
なんの躊躇も無いんでしょう
きっと大事なひとのてのひらの感触なんて
覚えてなくてもいいんだ

でもいいよ
それで、いいの
何もかも覚えていることなんてできない
あたしがあなたを忘れてしまいそうになっているように

ひとりはさみしいよと、あなたは言っていたけど
それは願いのようなものだったんだろうか
あなたの嫌いな朝日に、あたしは今やもう
スキップしながら向かって行くこともできる

目にうつるものすべて、ろくでなしで
あたしも例外じゃない
それでもハナウタを歌いながら歩くことだってできる
素晴らしい夜
だから、もう
忘れてくれたって構いはしないんだ


自由詩 夜の匂いを忘れてしまうまえに Copyright ユッカ 2013-11-01 13:42:47
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