灰色少女
西園 虚汰
ニュータウンのそばの団地
わたしはその屋上から身を乗り出す
鉄のにおいがする
眼下に見える景色は灰色だった
冷たい人間たちが巣くう
わたしは蟻の巣の断面図を思い浮かべる
人間とは……冬の吐いた吐瀉物
「どうりでくっさいわけだ」
わたしはひとりごちる
そう思うと吐瀉物がにおってくるようで
ちょっと気持ち悪くなってきた
視界が灰色に染まっていく……
灰色って幸せな色じゃない
鼠とか水分を多分に含んだ雲とか
不穏なにおいのする色だ
不幸だ、呪いだ、災いだ
だからわたしは透明になりたい
でも知っている
世界は灰色で満ちていることを
団地は灰色で塗られていることを
わたしは灰色少女ということを