生と旋律
西園 虚汰
夕焼けが吐き出す旋律は
不協和音を多く含んでおり不快だ
憂鬱の含む倍音はそれと似て
呪われたような音である
僕は僕とデュエットする
うまく合わない……それは憂鬱のせいだ
不揃いな倍音は僕の音感を狂わせる
僕は僕にたいして腹をたてる
「なにやってるんだよ」と。
しかし僕は何とも思わないような顔で
「君が下手くそなんだよ」という。
僕は拳を強く握りしめた
僕は僕を突き飛ばしてやりたいと思った
同時に世界から疎外されている感覚がした
僕が僕とあわせられないのは憂鬱な倍音のせいだ
「ほんとうに?」