現代
ヒヤシンス
残雪の山の息吹を彼方に見遣り、
今この胸に響く魂の鼓動。
笛の音に松の枝はそよぎ、
今此処に在る事の旅情を唄う。
遮る者も無く、また、憐れむ者も無く、
無頼の道の誘いにただその身を委ねる。
路傍の石はただ蒼く、手にすれば朱く染み、
湖上の月は白く病む。
ああ、幾年過ぎたろうか。
眩い潮流に飲み込まれ、唯々諾々と現世を移ろう哀れな心情。
選ばれし肉体の裏切りに涙など流してなるものか。
夜明けまでの道程に、鳳凰はその羽を休め、
濃紫色の空に今生の唄を詠む。
生きとし生けるもの、身空の峰を望む。