Trick or treat
月乃助


冬立つ月の夜

南瓜に火をともす

ゆらぐ明かり 

ゆらぐ 影も 心も

ひととせの 時のはざまの、いつかより

旅芸人たちがやってくる

誰もが 物の怪さながら

おとなす 重い足取りで、

人のものさしなど あざわらえ

半人半獣がやからども

蹄の足に 白亜の角や

ねぎらいに 人めくための餌 か

馳走を飢えもとめ

赤い灯明のしるべを 枝折りさながら、


「「 黄泉からまいった不形のものですじゃ
   呪いがおいやならば、どうか
   わずかなりとも おめぐみを


透垣のむこうの影に 小銭をなげる

良心に 喜びごとやうれしさと、


「 幸せになりなされ 
  道にまよわぬように いきなされ


降り敷く月明かりの 夜一夜

手づからに

獣たちは、夜気の香りを 確かめる


「「 ありがたや ほんに
  ありがた や


月夜のひめごと

旅芸人のものたちは、草の上に身もだえ

蛇の旧き皮を はぐように

我身が その昔そうしたように

化粧か装束か、

重き罪や穢れを

ぬぎさって しばし やすらい

つぎには、人へと

変化へんげして

みせた










自由詩 Trick or treat Copyright 月乃助 2013-10-28 21:20:38
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