冬立つ月の夜
南瓜に火をともす
ゆらぐ明かり
ゆらぐ 影も 心も
ひととせの 時のはざまの、いつかより
旅芸人たちがやってくる
誰もが 物の怪さながら
おとなす 重い足取りで、
人のものさしなど あざわらえ
半人半獣がやからども
蹄の足に 白亜の角や
ねぎらいに 人めくための餌 か
馳走を飢えもとめ
赤い灯明の導を 枝折りさながら、
「「 黄泉からまいった不形のものですじゃ
呪いがおいやならば、どうか
わずかなりとも おめぐみを
透垣のむこうの影に 小銭をなげる
良心に 喜びごとやうれしさと、
「 幸せになりなされ
道にまよわぬように いきなされ
降り敷く月明かりの 夜一夜
手づからに
獣たちは、夜気の香りを 確かめる
「「 ありがたや ほんに
ありがた や
月夜のひめごと
旅芸人のものたちは、草の上に身もだえ
蛇の旧き皮を はぐように
我身が その昔そうしたように
化粧か装束か、
重き罪や穢れを
ぬぎさって しばし やすらい
つぎには、人へと
変化して
みせた