水色のピアノ
草野春心



  水色のピアノを
  あなたは弾いていた
  獰猛なまでに素早く指をすべらせ けれども
  唇の端にはささやかな笑みをあつめて
  手に負えないおおきさと
  理不尽な複雑さをもった
  真鍮製の構造物の内側には
  三日月のように意地悪な
  緩められた一本の螺子
  ……あなたは
  ときに、顔を上げて
  額に皺を寄せ 訝るふりをするけれど
  あなたの指は駆けることをやめない
  あなたの唇から笑みが消えることはない
  譜面をぬいで踊りはじめる歌
  夜の部屋を透明に飾ってゆく光
  いつまでも
  終わることはない




自由詩 水色のピアノ Copyright 草野春心 2013-10-28 21:11:28
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春心恋歌