月の跡
りす

「朝」という字の月の彎曲に
僕は腰掛けている
朝になれば月は消えて
その先のことはわからない

味ノ無イ、がむヲ噛ンデルヨーナ、人生ナノ
ランドセルをしょった姪っ子が口を尖らす
学習院型の赤い筐体の奥には
僕の苦い忘れ物が入っている

「森」という字を書き集め
樹海という寝床を作る
枕の無い 真っ暗な夜が来る
遠くのキッチンで鍋蓋が割れる

コンセントまであと五センチ
そんな時 誰だって延長コードを夢見る
人よりも明るい 電気が恋しい
土砂降りの午後 ヤマダ電機へ走る

「髪」という字は窮屈なので
バッサリと切ってやった
床に落ちた僕の髪は
「髪」という字に似ていた






自由詩 月の跡 Copyright りす 2013-10-28 06:11:08
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