月の跡
りす
「朝」という字の月の彎曲に
僕は腰掛けている
朝になれば月は消えて
その先のことはわからない
味ノ無イ、がむヲ噛ンデルヨーナ、人生ナノ
ランドセルをしょった姪っ子が口を尖らす
学習院型の赤い筐体の奥には
僕の苦い忘れ物が入っている
「森」という字を書き集め
樹海という寝床を作る
枕の無い 真っ暗な夜が来る
遠くのキッチンで鍋蓋が割れる
コンセントまであと五センチ
そんな時 誰だって延長コードを夢見る
人よりも明るい 電気が恋しい
土砂降りの午後 ヤマダ電機へ走る
「髪」という字は窮屈なので
バッサリと切ってやった
床に落ちた僕の髪は
「髪」という字に似ていた