案山子
もっぷ

風あるだけの風景に
一つ案山子がありまして
さびしく村の賑わいを
じっと眺める日日でした

風あるだけかと思ってた
そこに居たのはお陽さまで
一つ詮無く立ちんぼの
案山子に影をあげました

案山子はそれが嬉しくて
たくさんたくさん話しかけ
たくさんたくさん自分にだって
返ってくるかと願ってた

だけども影は欠伸もせずに
黒黒伸びたり縮んだり
やがていつもの夕が来て
さびしく村に燈は灯り

お陽さまがくれた影法師
いっつも夜にはおさらばで
案山子はついに泣くばかりと
そして零れる涙ではなく

みあげてみました三日月を
みあげてみました星星を
風あるだけの宵の野は
なんてしずかにあるのだろう

案山子はそれに気がついて
しずか、ということしんみりと
考えていて思いつく
これは飛び切り贅沢と

贅沢贅沢贅沢と
思い詰めるよりほかなくて
思い詰めるよりほかなくて
思い詰めるよりほかなくて



自由詩 案山子 Copyright もっぷ 2013-10-27 01:46:04
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