朝のできごと
Lucy

雨の降る日は遅刻者が多い、と考えただけでも既にいらいらと重くなる頭を、無理に伸ばした背骨で支えて、混み合う生徒玄関で傘の滴に汚れた廊下の掃除の仕方と、遅刻の取り締まり方について、週番の生徒に指示していたら、三年生の男子の一人がそばに来て「先生ちょっとこい」と言う。

ちょっと来いという口のきき方が気にくわないので無視して話し続けていると、「早く、早く来いって」としつこく言う。この子はいつも授業中大声を出してふざけるか居眠りするかのどちらかで、私の話など聞いちゃいない。

「今話し中でしょ、ちょっと待ちなさい。」「いいから、それどころじゃないんだって、はやく、いいから。」と地団太踏んでうるさいので、「なんなの」と顔を向けると、怒った顔で「いいから来い、早く来いって。」と、あまり急ぐので「どうしたのいったい」と言いながらしぶしぶついて行くと、「早く早く」と走るので、

また何かめんどうなことでも起きたのかと、走ってついていくと、東側の廊下の窓のところまで行って私を振り向き「みれ。」と指さす

雨の晴れ間に二重に重なってくっきりと大きなみごとな虹・・・。


    





              
         《「蒼原」18号(1990年、8月)掲載》


自由詩 朝のできごと Copyright Lucy 2013-10-25 22:06:19
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