悲しみのデジャ・ヴ
龍九音
うちなぁ あんたが好きやったんよ
あんたに好きな人が出来たと他人から聞いて
ごっつい悲しかったんよ
でもな この想いは変わらへんねん
なんでかなぁ 不思議やなぁ
うちなぁ 散る桜の下で泣いたんよ
舞い落ちる花びら見て 綺麗やけど悲しくて
めっちゃ涙が止まらんかった
けどな この想いは消えんかってん
わからんけど ずっとここにあんねん
こんなうちをな
もう一人のうちが見てんねん
あぁ・・前にもあったなぁ
そう想うたわ
花びらが全部散ったら思い出に変わるかなぁ
変わって欲しいなぁ
変わらんといて欲しいなぁ
うちはあんたがいっとう好きやねん
多分・・・ずっと・・・
黒い人たちの列が続く
おれは真一文字に結んだ口で後にする
ふと
呼び止められて・・・振り向くと
泣きはらした眼の人が立っていた
無言のまま渡された封書
住所のない名前だけ記された封書
無言のままその人は言う
「もらってやってください」
無言のままおれは答える
「確かに受け取りました」
涙で潤んだ瞳で短いやりとり・・・
その人は肩を震わせて背中を向けた
こんな光景を見たことがある
そんな気がした
短い手紙を読んで
「あほやなぁ おれも好きやってんぞ」
独りごちたその頬に涙が流れた