電話ー姉弟2
……とある蛙
話の先にいるはずの姉
明るい声はしだい
次第に光を失い
七歳の姉は五歳の自分に向かい
満面の笑みで輝いていた。
今日の現実に
楽しげな昔が
揺らめく会話
苦々しげな現実に覆われた
初老の弟は
電話に耳をあて
電話に光をあて
ことさら楽しげな今を語る
二人の間には
何十キロの空間が広がっていて
その空間には、お互い見えない
現実が充たされている。
それを知りながら
気づかないふりをしている二人
積み重ねた歳月を
剥がし剥がし
話す会話
これから二人は何度話すことが出来るのだろうか
病の行き先を話すこともなく
病の結末を知ろうともしない
ひとり姉は父母の元へ
確実に父母の元へ
向かっているのだろうか。