電話ー姉弟2
……とある蛙


話の先にいるはずの姉
明るい声はしだい
次第に光を失い

七歳の姉は五歳の自分に向かい
満面の笑みで輝いていた。

今日の現実に
楽しげな昔が
揺らめく会話

苦々しげな現実に覆われた
初老の弟は
電話に耳をあて
電話に光をあて
ことさら楽しげな今を語る

二人の間には
何十キロの空間が広がっていて
その空間には、お互い見えない
現実が充たされている。

それを知りながら
気づかないふりをしている二人

積み重ねた歳月を
剥がし剥がし
話す会話

これから二人は何度話すことが出来るのだろうか

病の行き先を話すこともなく
病の結末を知ろうともしない

ひとり姉は父母の元へ
確実に父母の元へ
向かっているのだろうか。


自由詩 電話ー姉弟2 Copyright ……とある蛙 2013-10-25 17:18:35
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