探偵
nonya
ショルダーバッグに仕込んだ
高性能の小型カメラは
寝惚けた雨空しか写さないから
今日もメタファーを掴み損ねた
観葉植物の鉢に隠した
最新式の盗聴器は
ふざけたノイズしか拾わないから
今日もうっかり韻を踏み忘れた
靴を履きつぶすように
感性のようなものを磨り減らし
念入りに変装をして
詩人のような翳りをまとっても
私にはピストルの音はおろか
季節の痕跡すら掬うことができない
慌てて駆けつけた四辻は
相変わらず人と車の大洪水
溜息をつく間もなく流されるが
空気に揉まれて流れ着いた街が
何処も同じ顔をしているものだから
船酔いがなかなか治まらない
何を探していたのか
とっくに忘れてしまった私の中の探偵は
途方に暮れた面持ちで
廃業をぷんぷん臭わせながら
誰かが引き留めてくれるのを待っている