小さな林檎
砂木

忘れた頃に咲いた花が実になり
葉に埋もれて隠れるように林檎の姿になった
でも とても小さくて梅の実のよう
実をすぐりおえた枝の 摘まれなかった花芽
咲いたからには 結実せずにはいられない
発芽のもつ狂おしい性

かわいい小さな林檎の実 掌の中に指でくるむと
願いが かなえられそうな気がする
願いなど消えてしまえ という願い
このでくのぼうをかりたてる 一途な呪い
捨てられない花芽が 呪いをも吸い尽くす

雨降りの中 雨合羽のポケットにそっと入れる
もう大きくなる事はない 小さな林檎の実



自由詩 小さな林檎 Copyright 砂木 2013-10-22 23:43:38
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