縦形の神話
atsuchan69

天にまで届く巨きな思想が地獄からのび生えている

虫けらの死骸を運ぶ蟻のように
縦型の思想へ群がった神の似姿たちは、
あるときは雷に撃たれ
またあるときは激しい雨に叩かれ
赤い翼のある蛇どもの餌食になりつつも、
殆ど垂直にちかい傾いた思想の岩肌を攀じ登っていった

堕ちてゆくもの、
岩肌に顔を埋めたまま動かなくなったもの
祈りはじめるもの
いや、それでも登りつづけるもの‥‥

突然、雷鳴にも似た地響きが聴こえると
遙か遠くの思想が一本、崩れてゆくのを眼にした
神の似姿たちは、しばらく呆然とそれを眺めていたが
やがて一人がふたたび岩肌を攀じ登りはじめ、
次なるものたちも無言で彼の後に従った
         
         ※

 雲をすぎると、世界はさも明快に見下ろせた

見下ろせば、無数の倒れた思想が
荒涼とした大地を虚しく覆っているのが雲の間に間から覗かれた
ふと見上げると、赤い翼のある蛇どもが天空を舞っていた
恐ろしい予感が込みあげてくるのと同時に、
もはや逃げようもなく――
眩しい神の光が、奢り高ぶった巨大な思想を撃つのを見た






自由詩 縦形の神話 Copyright atsuchan69 2013-10-22 06:37:39
notebook Home