山手通りを巡る夜
番田 


仕事をするように詩を書いていた
だけど頭や心が疲れ 何もかもが消え 空にした 自分を
そんな不毛さを テレビでも見て 紛らわす
かけ寄ってきた人に テレビや あるいは
そこに陳列された商品の販売員となって的確に説明していた 
電気屋なのに 家はブラウン管だったけれど


その方が AVに出ている女の人の肌がよく見えた
きれいな毛だけは見えないけれど 動きはよくとらえられた
画面が小さいと 何も見えない時がある
それでもいいさ 顔を変倍されるよりは
休みの日はいつも汗ばんだ手でリモコンを握りしめネットが
ワイド画面対応にならなくてよかったと思う 秋葉原で買っている
何でもかんでものようなどうでもいい機械とはご無沙汰だが


夜更けを甘い酒の中に閉じこめて
山手通りをタクシーも使わずに渋谷の方にむかって歩いていく
歩いていく 小さなバーで水をただ飲みしながら 誰もが
光る街の方へ向かっていく 知り合いは だけど
中身なんてよくわからないし ひとりもいなかった
いなかったから 生きてはいなくて 死んだ
必要性も感じない 若いときよりも年をとってしまったんだ
意地ばかり張ってはまだ がむしゃらだった頃の記憶だけ



自由詩 山手通りを巡る夜 Copyright 番田  2013-10-19 23:53:23
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