老人と魚
服部 剛
老人は、もはや泣くこともなく
日がな寺の石段に腰かけ、笑うこともなく
そうして人は
化石になってゆくだろうか――
*
昨晩、偶然、点けたTV画面から
私に向かって、確かに微笑む
美術館の
高村光太郎の彫った、魚の顔。
*
一体の魚の内に響く幽かな、心音…
老人という化石に秘めた、木魚の音…
*
もし、日に照らされたら
瞬時に光る
美術館に置かれた、魚の
寺の石段に座った、老人の
目
自由詩
老人と魚
Copyright
服部 剛
2013-10-15 23:28:54
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