流し雛
殿岡秀秋

色紙を折って
六角形の船をつくる
水が入らないように
縁を高く折る
かわいいお雛様を折るときに
見えない不安を
そっとつつみこむ

これから
どうなっていくかわからないのに
想えば想うほど
不安は膨らんでいく
まだ小さいうちに
流し雛にする

六角形の船に
遠くを見たままのお雛様を立てる
息の風で
小川の流れにのせて
遠景に去るのを見る

見送ったのに
隙間風のように不安が
心の部屋にまいもどる

色紙でまた船をつくる
薄いお雛様の胸に
鈍く光る小さい刃を
紙で包んで預ける

流れに浮べて
見えなくなったら
心は小川のせせらぎをきく
夕闇に蛍が飛ぶ
その灯りと遊ぶ



自由詩 流し雛 Copyright 殿岡秀秋 2013-10-15 05:13:38
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