翠星石がいない
一 二

春のあいだ
君は私から離れて過ごした

色鮮やかな四月が晴着を着飾り
あらゆるものに春の息吹を吹き込んだので
君の姉妹たちは皆
笑い声を挙げて一緒に踊っていた

だが、鳥の歌を聞いても
色も香りも、とりどりに咲く
花々の甘い匂いをかいでも
私は夏向きの楽しい話を語る気にはならなかったし
咲き乱れる花床から花を摘む気にもならなかった
瑞々しい葉脈をなぞることもなく
子房の深い赤らみを褒めることもなかった

これらは芳香を放つもの
要するに君をなぞった快い模写にすぎない
君が全ての手本なのだ

ともかく、まだ冬の感じがした
そして、君がいないから
君の影と戯れるように
私はこれらと戯れた


自由詩 翠星石がいない Copyright 一 二 2013-10-13 05:07:46
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