断片的帰路
ストーリーテラー

前のワゴン車が35回目のブレーキを踏んだ
そのうちの24回は自分を守るために踏んで
残りは、修理費と野良犬のために踏んだ
「ア・イ・シ・テ・ル」のサインなら7回分だ
愛するよりも死んだり殺したりする方が容易いらしい


フロントガラスに映るうろこ雲は夕暮れのノスタルジーに蓋をする
車内のデジタル時計に3分足して本当の時間を計算してる間に
星空の端がすべり込んできた
今日も神様の紙芝居は絶妙な塩梅だったようだ


金曜日の帰り路はいろんなものがよく見える
ひび割れた横断歩道は街灯に照らされ
ウサギの横顔が浮かんでいた
うろこ雲にかまけて、月からとび跳ねてきたらしい
たまには世界を見上げることも必要なんだ、って教えてくれるの?



窓から入る夜の風で僕は輪郭を忘れてゆく
朝から飲みかけの缶コーヒーに軽蔑をくれてやって
今日は車庫に頭から突っ込んだ
ドアをバタリ。
「ただいま」を言う前に
今夜は妻を抱くことに決めた


自由詩 断片的帰路 Copyright ストーリーテラー 2013-10-12 20:06:51
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