古臭い詩
草野春心



  朝早くに
  古臭い詩をわたしは書いた
  潮水に濡れた岩間を縫って這うように歩く
  数匹の蟹の節足のことなどを



  カーテンのあちら側で降っている雨が
  薄笑いを隠しながら次第に忍び寄って来て
  わたしの体のなかに丸ごと移りこむ
  ふたつの雨が、恰も競うように
  硝子窓を硬く穿ち、
  血液を泡立ててゆく



  打ち寄せる白波のせいだろうか
  蟹は再び岩間に消えた
  今日は朝日が見られなかった  
  缶コーヒーはビル風の味がする
  古臭い詩が 灰色の罫線の上でじっとしている




自由詩 古臭い詩 Copyright 草野春心 2013-10-12 10:42:01
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