パンスペルミア抄
由比良 倖
*1
インターネットで
あなたの名前を検索したら
多くの死者が出た
あなたのように
全ての遠くに自信を持って酔えないよ
耳があるもの無いもの
血管のある脳漿
俺のせいでひどい目にあった人たち
昼休みにはグループホームで
世界一いまいちな冒険をした
彼、彼ら、彼女、彼女らはふてぶてしく散在したが
残念なことに「あなた」は
僕の日誌に登場することを注意深く避けていたね
僕?
僕は朝の9時には眠りにつくよ
夕方の5時になると僕は生まれ変わったように
さっぱりして目が覚めるんだ
現実的に言ってね
僕は朝なんか大っ嫌いだ
*2
絶望を基点とした踊り
夜の風圧に妨げられた私の笑み
朝8時に起きたんだ
夜10時までODしながらめちゃくちゃに踊った
その間詩集を2冊読んで
五つの詩を書いた
体重を3キロ減らした
といっても65キロだけどね
とても水平を保てない
へびいちごがえんえんと続いている
砂糖をたっぷり入れたコーヒーでベゲタミンを飲んだ
今日は何とも良いお日和で……
*3
[あなたの病気は終わりました
いえ、小康状態というところでしょうか
あなたは詩を書けなくなりました
それとも詩を放棄したのですか
夜になりました(あっ、待って!)
窓から見える月がお茶を濁していますね]
[行方不明になろうかなあなんて思いました
他殺死体になって
腸壁なんかべろんべろんになって]
……
なんて書いている自分が
原爆ひとつ作れないなんて情けない
(文脈にさ、回想を絵の具みたいにして塗り込みたいよ)
両親さえ偉大に見えるんだ
実に
偉大にね
完全に僕はコミットされてる
完全に僕はコミットされてるよ
……
コミットってなんだっけ。
知らないよ
詩みたいなの書いてみただけ
*4
ある青天の午後
私は不意に詩が書けなくなりました
*5
(ねえ神様
いるなら私に教えてよ。
何故私はいるの?
何故私は死んだの?)
*6
自虐的にしか詩は生まれない
自虐的にしか僕は生きられない
実にたくさんの憂鬱が吐き捨てられてきた
僕はそれをもったいなく思う
居ても後悔するだけの場所に
僕は何度も身を置いた
後悔することそれだけのために
安息の場所を
夢想することそれだけのために