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北街かな

絶望の万年床でカビを生やしながらウラニウムガラスを抱いて薄黄緑色に発光していたら
お前を今日から爆弾にするから炊飯器に入って圧縮されろと命じられたので仕方なくふとんから出ました
ふたをひらいた炊飯器のなかはタイムマシンと異次元関門の混ざったやつになってて冥王代の隕石がごったがえしており私のお伺いする隙間などあるようにおもえなかったのですが
傷心旅行中のベテルギウス星系人のきまぐれによるご協力の甲斐あってなんとか突入に成功致しました次第です

有史以来の地球全地域で開催されたあらゆる処刑の光景がながれていくタイムトンネルのなかをイエティの背に乗って潜り抜けてゆくあいだ、私はベテルギウス星系人のカムチャツカ・エトロフさんとたくさんたくさんおしゃべりしました
彼はベテルギウスが超新星爆発したときに突然変異して触覚が体中から生えて頭に腐肉食花弁が咲いたおかげで恋人にふられてしまったんだそうですが
この爆発によってオリオンが巨大な砂時計であることが判明し各星系の技術立国は我先にとオリオンをひっくり返そうと鼻息荒く競い合っているそうで
エトロフさんはうれしそうに、リゲルなら俺のオリオン腕のなかでねむっているよと言って耳と唇の位置を変更し、じぶんの脳をたべて消えてしまいました

タイムトンネルがゴールに近づいてきますとだんだんイエティがパンダに変わっていきます
部分部分をあざとく黒い毛に染めてゆくベテルギウス生まれのイエティさんは御年ろっぴゃくよんじゅうにさいだそうで爆発のなかから生まれたその瞬間から急いで光のはやさでわれわれの星まで駆けつけてきてくれたんだそうです
なぜかと言いますと、そのころ足利義満はじゅうよんさいでしたがりっぱに将軍様をやっており日々頓智の訓練に余念がなく、屏風をつかみ空に掲げてトラトラトラと叫んでいましたがそれを救難信号だとイエティさんが早とちりしてしまいほかのたくさんのUMAたちを引き連れてついに到着し、地球はふしぎなもので溢れてときどき人類も軽くびっくりしましたのですが、結果的には良かったんじゃねとおっしゃり、本当にパンダになってしまいました
可愛いですね
ベテルギウスがばくはつしたあのころ、地球はそのようなこと露知らずにぐるぐるしておりましたが、ベテルギウスと太陽のプライベートな電話をうっかり盗み聞きしちゃったことにより大ショック受けてしばらく青ざめて地球のみんなはうっかり寒くなっちゃってしばらくすこしだけ大変だったみたいです
そういったこともあってかイエティさんはもこもこの防寒形態でやってきたわけですが、今となってはパンダ野郎です
可愛いですね

タイムトンネルを抜けると薔薇の香りがしまして驚きました、衝突した星々が次々に芳香剤になっていく宇宙の果てはまさに形のない花園です、ここに訪れたものたちはみな、目も耳も舌もぜんぶ鼻になってしまうんです、愛と破滅の匂いに満ちていてあらゆるものがここで時を刻むのがめんどくなってきてぐるぐるまわる
つらくて涙が止まらないんだ
そこらじゅうの隕石がブラックホールのそばで殴りあいをしながらうずまきになっていきます
かつてベテルギウスの大爆発がうみだしたあまねくUMAたちが無限大のなかに吸い込まれていくのをみました

こうして私は爆縮され
質量を失って炊飯器のなかでだいばくはつしたのです
りっぱな爆弾になれましたか

褒めて。


自由詩 << ご・は・ん >> Copyright 北街かな 2013-10-09 19:01:04
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