冬の ハヤブサ
藤鈴呼
最後に続く 黒丸の群れは
猫の落とした 不思議な能力
にゃあ でも
にゃにゃあ でも
にゃあにゃあ でも ない
聞き取れぬ程の 呟きと
爪に残された 皮膚片で
ご主人様を 特定するのです
何時までも 垂れ流しにする
如雨露の水
何処に 根を張っているのか
張っているのは 気の持ちようか
痛む肩へ そっと置く 湿布か
考えても 考えても
くるくる巡る感情は
応えを 知らない
喉が渇いた と 揺れた気がして
水を与えた
与えた
お前の為に
してやった
してやったり の
ニヒルな笑みとは
違う 微笑み
上からは 分からない
何処まで 繋がるのか
もしや 途切れて しまうのか
見えない 糸だから
寧ろ 手繰り寄せたくも なる
見得ない 心だったら
どうする?
気付かずに 注いだ水は
冷凍庫で 固まって
凶器へと 代わり
昔 見た はやぶさが
バササ と
大嫌いな 羽音を チラつかせながら
行き過ぎるのです
生き過ぎても 良いですか
粋過ぎた方が 良いですか
その根を知らずに 水遣りを続けても
仕方が無いのでしょう
上からは 見分けが付かず
思わず 注いでしまうことは 有っても
決して 受け止めない
器の 小ささを
ゆっくりと 眺めながら
溜息 交じりに
口笛を 吹く
飛び出す瞬間 雪煙が舞い
包まれた瞬間 無になれる、
孤独だと感じていた 不安な気持ちごと
払拭されるような 気分で
駆け抜けた
冬の ハヤブサ
★,。・::・°☆。・:*:・°★,。・:*:・°☆。・:*:・°