美しき村
ヒヤシンス


高原にそよ吹く風も冷たく、歓喜に満ちた秋の午後だ。
遠くを走る小海線に乗客たちは陽炎のようで、
近くの白樺林をくっきりと現実のものとしている。
道端に咲くコスモスに子供たちの息吹を感じる。

活火山のこの村は私に優しく、素朴な人々の匂いもまた心地よい。
私は私の神様に感謝する。この村と出会えたことを。
かつては宿場町だった街道で、豊かに実った高原野菜を売っている商店のおばさんは、
いつも笑顔で私に元気と勇気をたくさんくれる。

この村で人の優しさを知った。
この村で自然の厳しさと美しさを知った。
この村で私は自分を信じる勇気を知った。

高原列車が駅に来る。
誰に見送られる訳ではないが、そっと自分の半身をここに残してゆこう。
また来る日までさようなら。愛した村よ、さようなら。


自由詩 美しき村 Copyright ヒヤシンス 2013-10-08 04:59:51
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