夕陽
nonya


沈んでいく
高層ビルの乱杭歯を
掠めて

噛み砕かれる
西の稜線の
大臼歯で

この街で生き長らえるなら
むやみに懐かしがってはいけない

闇の中でも決して眠らない街は
執拗な細胞分裂を繰り返し
朝が来るたびに真新しい身体で
産み落とされてしまうから

私達は無理にでも首を捩じ曲げて
あるかどうかも分からない未来を
変わり映えのしない今日の堆積の中に
見出さなければならない

ほとばしる
血潮に似た
柑子色の光

浴びせかけられる
微かな痛みを伴った
懐かしい断末魔

すぐに後ろを振り返ってしまう
そんな私に科せられた罰は
帰る場所をことごとく剥奪されるという
ほろ苦い罰だ




自由詩 夕陽 Copyright nonya 2013-10-05 09:07:25
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