旅人
由木名緒美
長い旅路だった
絶望の灯火を燃やさねば
死すら受け入れがたい道を
ただ歩いて
私は太陽に触れる
命の限界を超えて愛するは
その代償も大きく
喜びと苦痛は何処で結ばれ輪になるのか
あなたの熱はあまりに熱く
後れ毛が焼け焦げるほどの情をほとばしらせて
煙が明日を 白に飲み込もうとする
すべての体験を清算しよう
絶望は
群青の空に浸透する午前五時の光の中へ
消えゆく影は希望の肌をいっそうすべらかに照らしていった
天高く昇った太陽を仰げば
収斂する瞼の裏に
走馬灯のごとく記憶が波打つ
愛するが為に捨てた無数の愛着を
ひとつひとつ取り戻していく二度目の旅路で
どんな過日を塗り重ねるだろう
暗記した道程の先端で結ぶ印の数々
切手を貼らない封筒の中で
あなたに宛てた、その行間は
静かに呼吸する 私の胸の中で
そっと産声を上げるのだろう