白い指
rock

彼と彼女の人差し指から、蜃気楼のように苔が蒸しはじめて、臨月を迎えた猿の聖母は二股になった道を駈け下りていきました 麻の衣装を着たみどりのかえるたちが、合唱をします 音階がふりわけられた椎の葉に、天からこぼれおちたおたまじゃくしたちが、臨終の歌を奏でながら まろやかの岸辺にはまよなかの騎士がひとりで佇んでいて 干上がった湖を背にして落ち葉を集めていました 落ち葉はくろい腐食土に埋もれてしまい、葉が木漏れ日の時代を生まれなおす頃に、白い浴衣をまとった彼と彼女が樹海の底にひとりの子供をつくり、雨土の記憶と共に夜をみずにながしてしまいます


自由詩 白い指 Copyright rock 2013-10-04 03:08:24
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