ぽ ん   や           り    。 
北街かな

 そこはかとなくぽんやりとゆめをみていたのです
 ぽんやり?
 ぽんやりです。
 なんと、それはどのようなヤリなのですか。
 ごせつめいいたします。
 あれは今から……

 ごまとありが砂漠のうえで熾烈な戦いの日々を送り、ついに花びらがはらはらとしょうりした翌日の昼が木星のまんなかに急速に落下してのちの23兆459億9万120日後のことなのでした。
 おなかがすいたのでテントとぼろきれを食いました。胃が壊れるのと同時に砦と城壁がプリンになりました。ついでに食ってやりました。国が滅び、島が沈みました。すると大陸が浮かび上がりました。ときはなたれたのです! おめでたいことだ。

 そこでメハナ・クチビルはめざめたのです。メハナ家のなかでもとりわけその娘は花のようでした。鼻も、くちびるも。さて、そのような夏の絶頂期において、めだかの学校では新しい規則が公布され世界制服をうみだしました。私がいま、着ているコレなんですけど、どうにもこれサイズが987億643万4678ナノメートルくらい合ってないのよね。
 お困りのお前たちに告げるラジオ放送を食らわせてやるよ。いいか?
 スピーカーとビーカーとスピーディー・カーニバルそしてカニバリズムとかいうあたらしいリズム感覚を冷蔵庫に入れる。すると翌日になれば皮膚と唇とにつつまれたメハナ家の姉妹があらわれるから、急いで髪の毛を切って藁人形を編むのだ。切っているうちに、髪型駅前の駅員さんはあっというまに汽車に置いていかれてしまったので、玉のようにかわいらしいあずさ二号になった。こうして絶滅音源が数百万年後にリバイバルされたのち、複合娯楽施設のぜんぶは観覧車だけを残して消えた。
 だけどあずさと私の思い出はそれだけにとどまらない。あずさはマンションの9兆8356億8702万9867階から飛び上がり自殺を試みたが、勢いがつきすぎて未だに飛び上がり続けているのだ。宇宙速度を第三体操まで超えて、怪王政も天皇制もなんのその、趣味はオールトの雲に溺れるボイジャーたちとの併走だ。あずさが私から旅立ってから八時ちょうどになるまで、地球はずっとあとずさっていた。気の毒な話をしてやるよ。
 クレーターに空気清浄機を設置した話のことだよ。どれだけの未来に備えたのかと小一時間ねこパンチされるべきだ。そもそも月に清浄したくなるほどの空気感があったとして、どうやってそれを読めばいい。地球とはだいぶ雰囲気も話題も違ってくる。郷に飛び入っては夏の扉と言うじゃないか。さっそく開いてみると、ペットボトルのなかにたくさんのゴムボールがスーパーボールしててロムカセットが火花を出してた。挿したり抜いたり射したり貫いたりしていたわけだが、こういったアダルトグッズ専門店内における移動遊園地でのマナーとして、できる限りマウスは使わずにキーボードショートカットを駆使するべきだという訓示が今、この時代に戒めとなることは想像にかたくない。タップしてフリックして、よくこねても、こねこでも、延びません。肉球の弾力もこのときばかりは役には立たぬ。
 群青色のカモメが鳴いている。灯台のてっぺんにある宝の地図の×印がいま、大事なことを言おうとしているから静かにするべきだ。何度も沖へ沈み、そのたびに豪華客船が絵を描いていた。沈む船は大きいほど、恋愛は捗るのだ。そうしてお嬢様は生き残った。船もお嬢様もぬいぐるみだった。いまごろ、アルファケンタウリ三丁目あたりを飲みながら飛んでいる。
 都会の真ん中にずっと続いている森があって、あまりにも続いているので都会がふたつに分かれて別々の言語が発達した。それだけならいいのだが、マンホールの穴と消火栓の穴と無意味な穴との間に不信感が募っていたことも災いした。理解できないことを責めてはいけないし、理解したとうなずくのも、正しいとは言えない。
 そうとも限らない。
 ぽんやりしているとはこういった事象の不連続連想と不定形夢想状態を戒めたり、解き放ったり、深く沈めたり、割って粉々にしたり、抱き枕にして寝たり、抱きしめて好きだと耳元でささやいたり、抱きしめた腕のなかの露出した心臓の清らかさに感傷の不在を嘆いたり、触れることかなわぬ心と心の可視光によるシンフォニーがハーモナイゼーションする場合における、協和、連帯、不合理の殲滅、蜂起、救済、救心、目薬、昼間、夜闇、星くず、こんぺいとう、綿、てのひら、軽く握った手の中のなにもない空間、と言うこともできるが必ずしもそうとは限らないのさ。ぽんやりは言った。時にはするどい。投擲してもいい。突き刺すかもしれない。心のシンフォニーを、思うさまに。

 といったそことかはっとしたかにかかわらず、ぽんもりとしていたのです。
 ぽんやりじゃなくて?
 類似したものである。ものでもないかもしれない。
 おくがふかいのね。
 かぎりなくうすくて宇宙よりひろいよ。
 光よりはやいよ。
 だから現実にあるだなどとゆめゆめハーモナイゼーションしては、何をする、やめろ。
 やめないよ。
 もっと、ぽんやりしてあげる。


自由詩            ぽ ん   や           り    。  Copyright 北街かな 2013-10-04 00:09:35
notebook Home 戻る