へたくそ
まーつん

 やーい
 へたくそ

 生きるのが
 へたくそ


 つるつるに磨かれた
 硝子テーブルを這いまわる
 コガネムシみたいに

 もがいちゃってさ
 いたずらに

 ピアノの音色に誘われて
 花畑を迷い出た
 世間知らずの蝶みたい

 どこかの窓に飛び込んで
 飢えて窶れはてるまで
 硝子に足を滑らせて
 甘い旋律に浸っている

 水の冷たさ知りたさに
 飛び石の途中、立ち止まり
 流れに足を掬われて
 河に飲み込まれていく

 だから
 いつまでも渡れない
 望みの叶う、向こう岸へと

 空に届かず落ちていく
 折れた翼の紙飛行機

 夢を折るならきっちりと
 風に曲がらぬ厚紙で

 休日、ソファーに横たわり
 夢とうつつの境目で
 眠い目を擦る、私の耳に

 光と風の、草原から
 虫捕り網を肩に載せた
 子供の指さし、からかう声

 やーい
 へたくそ

 捕まえるのが
 へたくそ

 欲しがってばかりで
 手放そうとしない
 下心は見えているのに
 上手く隠したつもりかい?

 口が回らないなら
 チャックして

 見つからないなら
 目を閉じて

 静かに
 息をしてみなよ

 欲しいものが
 なんなのか

 そうすればきっと
 分かるから

 少年の掲げる籠の中
 色とりどりの虫たちが
 宝石のように光っていた


自由詩 へたくそ Copyright まーつん 2013-10-03 14:41:11
notebook Home 戻る