彫り出しもののこと
八男(はちおとこ)
ある人だったと思う 土を掘っていると カチン
石が出てきて そこには おはようございます と 彫られていた
大変珍しいものだと 発表された
これを見るために 各地から人が集まり 長蛇の列となった
いつ行っても 二時間待ちだという
ショルダーバックから 手作りのコーヒーを取り出し飲む
ようやく石までたどり着いたとき 少しうれしかった
少しうれしかった それ以上の よろこびは ないと思う
おはようございます と 彫られた字を 目の前にして
ういっす と 何度も言ってみた
できるだけ長く言っていたかったが
係の人が もういいですか と 制止した
いや もう少し
バックから 花を取り出し 供えた
ここに来た人は おはようございます と
さよなら しなきゃ ならない
その帰り道 地上というものを 考えなおしてみることにした