【 風の栞 】
泡沫恋歌

夕暮れの窓辺
瑠璃色の切子硝子の一輪ざしに
梔子の白が映える
夕凪 無風状態になれて
心が弛んできたら
闇が迫る少し前 風が頬を渡る
どこからか声を運んできた

楽しい声 悲しい声
美しい歌声 断末魔の叫び
知らない街の言葉たち
風は旅人
世界中の空を彷徨っている

群青色に染まりゆく
今日という昨日に
新しい栞をそっと差し込む
瞬き 閉じてしまった頁たち
私は大事な思い出を
風の粒子に混ぜて飛ばしてしまった
螺旋を描いて舞い上がっていく

「サヨナラ」と言って
二度と還ってこなかった
大事だけど
忘れてしまいたい記憶もあった
風は知っていたんだ
感傷なんかで振り返らない
さようなら……

天空高く 地を這うように
縦横無尽に飛びまわる
心の頁を捲っていく風よ
その自由さに翻弄されながらも
背筋を伸ばして
立ち向かっていく

未来という栞を
挟む頁を私は探している



自由詩 【 風の栞 】 Copyright 泡沫恋歌 2013-10-01 13:31:28
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