神のアール
平井容子

紙ねんどでできた魂が
窓ぎわで色あせていました

緑化された街へとつづく
海風にやぶれた辺外の家の
そこだけ乾いた晴れの日のモーヴ

わたしはわたしの火で身を焼いた
「あの日」となづけた意思を
もの言わぬうみへ
ゆゆゆ、と沈めていって
色弱の目を投げる
いちばんとおくから
いちばんちかい波の間に間に…

たそがれ、という響きに
つきまとう恥ずかしい風を招きいれて
いま手縫いのカーテンははためく

出てゆかず
入れもせず
またしても「ここ」で
わたしはわたしの手で火葬する
砂になろうと心尽くす影を
ぎゅっと抱きしめる





自由詩 神のアール Copyright 平井容子 2013-10-01 09:41:49
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