閉塞前線
殿岡秀秋

朝の心の空に
温暖前線がやってきて
晴れて
温かくなった
さっきまで雨が降っていたのに
雲も遠くへいってしまった
公園に散歩に行って
寒椿の花をながめる

午後
嫌なことを思いだした途端に
寒冷前線が
勢いよく進んできて
温暖前線においついて
その下にもぐりこんだ
雲が重なり
気温がさがり
風が吹き
冷たい雨が勢いよくふる

躰は屋根の下にいるのに
なぜ濡れて
寒さに震えるのか
言葉のレインコートの襟を立てる

子どものころには
学校に行くのがいやだった
そのころの天気図の方がよほど
荒れ模様だった
しかし
生きているのは現在だ
大切なのは今日の天気図だ

明日には
閉塞前線がとけるだろうか
ぼくにできるのは
言葉を燃やして
吐く息を暖めて
重い雲を動かすことだ

前線がわずかに動いて
空の裂け目がみえてくる
青空だ




自由詩 閉塞前線 Copyright 殿岡秀秋 2013-10-01 04:54:46
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