スポットライト
栗山透

大きな光を抱えていた
真っ白に強く光ったかと思うと
赤や青や紫にもなって光った
強烈なコントラストだ
幻のような夢のような光だ
間違いなく ここにずっといたら
涙が出てしまう
明日のことも来年のことも借金も忘れて
光に埋れてしまう

光はつねに
音と共にやってくる

音とはつまり
心臓を突くバスドラムで
お腹の下に響くベースで
涙をさそうギターで
流れる水のようなピアノで
呼吸のような歌だ

なんの雑音もない

完全な世界
それは宇宙でいちばん綺麗なものだった
間違いなく ここにずっといたら
涙が出てしまう
音の波にすがるように溺れて
グルーヴに呑まれてしまう

なんの雑音もない

余計なことは誰も言わない
耳を塞いでいるわけではない
音で溢れているから音は聴こえない
怖いことは誰も言わない
怖いことは誰もしない

悲しみが汚れる前に
悲しみが消える前に
もう一度 光へ


自由詩 スポットライト Copyright 栗山透 2013-09-29 05:54:31
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