ピオーネ
かいぶつ

くだものまるごとのみこんだ
ひとくちめで水がうまれて
ふたくちめに街がうまれた
もうひとくちはいらない

だれかの世界にこぼれ落ち
やわらかい素足に踏みつぶされて
かたちを失って色は破裂して
あしあとが太陽にとどけばいい

口中いっぱいに酸味を広がらせ
だれもいない都市を
キリンに跨り進んでゆく
信号は、青く、黄色く、赤く、灯る

やせすぎて卒倒しそうな
ビルの窓から手をふる
少女の黒髪が夕凪に引き千切られる
やがてその存在も消えてなくなる

街に夜が来ると、キリンは体を
コンパスのように折り曲げねむった
僕も同じようにねむった
そろそろ冬が来ることを
僕もキリンも知っている



即興ゴルコンダ(仮)13/09/28


自由詩 ピオーネ Copyright かいぶつ 2013-09-29 02:05:10
notebook Home 戻る