ピオーネ
AB(なかほど)


ひとつずつ
酸っぱい思い出を
口にしてから食べると
より甘く感じる
けれど
三つめの思い出で
泣いてしまいそうで
味がわからなくなる
その種は花を咲かせて
実もなるけれど
その実の中に次の種はつけない
それは
どこか遠くの
だれかの種になる
遠くの遠くの誰かの種になれと
泣いてしまいそうになる

気づくと
皿の上には柄だけが残っていて
皮も残っていない







即興ゴルコンダ より


自由詩 ピオーネ Copyright AB(なかほど) 2013-09-29 00:55:22
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